ギブソン・フライングVを愛用した3大ギタリスト
こんにちは!ABCミュージックスクールギター科講師の星野尚紀です。今回のテーマはギター界でも異色のインパクトを放つ「ギブソン・フライングV」。
攻撃的なシェイプとそこからはイメージし難い甘いトーンのフライングV、この半世紀でどれだけのギタリストを魅了してきたことか…。その歴史と愛用した3人の代表的ギタリストを紹介していこうと思います!!
フライングVとは
ギブソン・フライングVは時を遡ること1958年、ギブソン社がライバル会社であるフェンダー社に対抗して“Modernistic Guitar”という新たなラインナップとして考案した奇抜なシェイプのギターであった。アルファベットの“V”を逆さまにしたボディに鋭角的なヘッド、まさに“飛行体=Flying”のイメージを具現化した最先端のシェイプ。ブリッジ下部のボディがカットされているためか、サウンド的には案外ローはスッキリしていてミドルが際立つ。当時主流だったブルースプレーヤーを中心に広まり始めたのもこのサウンドに起因する所もあるだろう。夢やイマジネーションと共にどこまでも“飛んでいく”、童心を忘れないギターキッズの心を掴んだ魅惑のギター:フライングVは意外にもその「時代を先取りしすぎてしまったシェイプ」のせいか、苦難の歴史がある。
フライングVの歴史
先述の通り、ギブソン社がフライングVを発表したのは1958年のこと。当時はその見た目のインパクトが大きすぎてしまったせいか、または座って弾きにくい等の機能的な原因からか翌年の1959年に製造を中止することになる。2年間での総生産数は資料によるとわずか98本。その後、ボディマテリアルの変更やヘッド形状の変更、パーツ類の変更・改良を重ねて1stリイシューが’67年に発表され、記念モデルの“Medallion”が’71年、そして爆発的に生産数が増えた2ndリイシューモデルが’75年に発表される。80年代に入るとフライングVのイメージにぴったりなHR/HMブームが到来、遂に時代が“追いつく“という大きな成功が訪れる。ギブソン社は勿論のことアニバーサリーモデルや限定モデル、他社のコピーモデルや派生モデルが発表され続け、今となっては代表的なギターシェイプとして認知されている。
こういった紆余曲折と生みの苦しみを経て成功を収めたフライングV、まさに「ミュージシャンの生き様」のような歴史こそがギタリストを魅了し続ける…のかもしれない。
ジミ・ヘンドリクス
フライングV愛用者としてまず外して語れないのはブルース、ロックギタリストのジミ・ヘンドリクス。彼が使用していたとされるのは’:67年の1st リイシューモデル。このモデルにはギブソンが独自に開発した板バネ式のトレモロ・ユニット、ショート・ヴァイヴローラが搭載されているのが最大の特徴であり、細かな揺れ幅のこのトレモロを彼は好んで使った。ルックス面においてもジミはそのフライングVに自らサイケデリックなペイントを施し、’67年~’68年のヨーロッパツアーで使用した。元をたどればジミがフライングVを使い始めたのは彼の憧れであるブルースギタリスト、アルバート・キングがフライングVを使っていたからという事も想像に難くない。
アルバート・キング
フライングVを生涯使い続けた生粋の愛用者、そしてジミ・ヘンドリクスの憧れの的であったのがアルバート・キング。カラッとしたサウンドに沁みるチョーキングの連発、しゃべるようなペンタトニックフレーズ、豪快なプレイはブルース界にとどまらず当時のロック界のギタリストや後世のギタリストに多大な影響を今もなお与え続けている。
彼がフライングVを使って演奏している映像は今も多く残っており、アンプやエフェクター、周辺機材に起因する年代別のサウンドは多少違えど、一貫してローの大人しい、ふくよかで軽快なサウンドが聴ける。一点あげるとすれば彼は指でピッキングしている(弾いた瞬間に弦がフレットにあたる)ためかアタック音がはっきりしている点もアルバート・キングの象徴的サウンドであろう。
マイケル・シェンカー
皆さんお待ちかね、フライングVを語る上でこの人を挙げなかったらビール瓶飛んでくるんじゃないかというくらい象徴的なギタリスト:マイケル・シェンカー。名盤「帰ってきたフライングアロー」で鮮烈なソロデビューを果たし、“神”と称されるドイツ人ギタリストである。マイケル・シェンカー=フライングVというくらい有名で名曲「Armed and Ready」、「Cry for the Nation」、「Intor the Arena」、「Captain Nemo」等挙げていったらキリがないが、その独特の哀愁あるギタープレイやメロディはどこか日本人の琴線に触れる部分があるように思う。数々のインタビュー映像や記事に目を通すと、元々スコーピオンズ時代のステージ上でギターソロの直前に弾いていたレスポールの弦が切れ、その場で兄のルドルフ・シェンカーの所有するフライングVを使ったのが始まりだそう。50WのマーシャルにつながれたフライングVサウンドに惹かれ、彼も生粋のフライングV愛用者となった。
インタビュー映像などで彼のシグネチュア・トーンである“半止めワウ”サウンドの誕生秘話(別に秘密ではないが)をみれるが、自分のギター・トーンそしてそのミドルに相当なこだわりを持っている様子。
現在はDEAN社の自身のシグネチュアモデルを愛用している。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
僕自身もあのド派手なシェイプと豊潤なミドルの甘いトーンに魅了され、メインで使っているフライングV。フライングVシェイプを使うギタリストならランディ・ローズ、ケリー・キング、マイケル・アモット、アレキシ・ライホ…etc.がいるじゃないか!と聞こえてきそうですが今回はあくまでギブソン・フライングVユーザーのまとめということで。
かつてフライングVがそうであったように、山あり谷ありがあってこその音楽人生、楽しんでいきましょう。人生フライングV!
それでは次回のブログでお会いしましょう。ABCミュージックスクールギター科講師の星野尚紀がお送りしました。