ピッキングアングルと出音の傾向
今回は「ピックの持ち方によって変わるピッキングアングルと出音の傾向」について僕なりの考えをお伝えできればと思います。
ピッキングアングルの違いによる出音の傾向についてはギタリストの間で既に長年の研究がされてきたことなので大きな違いはないと思いますが、確認のため新品の全く同じピック(Jim Dunlop社Tortex Standard 0.88mm)を使って実際に音を出し、確認しながらの解説をしようと思います。
それぞれのアングルの簡単な持ち替え方も併せて解説します。
それでは早速いってみましょう!
ピッキングアングルとは
まず手始めに、そもそもピッキングアングルとは何のことを言っているのかについて少し解説してみたいと思います。
ピッキングアングルとは
“ピッキング=弦をピックで弾く”、“アングル=角度”、
つまりピックが弦にあたる時の角度のことを言います。
そんな数ミリのことなんて出音に影響あるの?と思うかもしれませんが、それがそれが結構馬鹿にできない影響があるんです。
恐らく科学的な理由でいえばピックが弦をヒットする角度によって直後の弦振動の仕方が変わるから、だと思います。
野球でいえばバットを持ってスイングをするとして、そのスイングのどのタイミングでボールにあてるかによって打ちたい方向を調整するようなもの。
打点がど真ん中ならばまっすぐに、少し早いと内側に、少し遅れると外側に、相手が投げた球種等実際の状況は一切考えないものとした単なる理論上の話ですが、野球の場合は早すぎたり遅すぎたりするとファールになり、あっという間に三振になってしまいます。
ですが、ギターにおいてはその限りではありませんのでご安心を。ギターを弾く場合は弦を弾き(ヒット)さえすれば音は出ますから、あとはその出音に自身が納得できるかどうか。無論ギターを弾く上でも空振り(ピックが弦にあたらない)してしまっては当然アウトですが。
三種類のピッキングアングル
大きく分けて三つのピッキングアングルがあると考えておいてください。
一つ目はフラットピッキング。
弦に対してピックに角度がつかない、真平な状態で弦をヒットする方法です。
二つ目は順アングルピッキング。
これは右利きの方でも左利きの方でも、ギターを構えて弦をピックで弾いたときにピックがネック側に傾いた状態でピッキングする方法です。
最後に逆アングルピッキング。
これは順アングルピッキングの真逆で、ピックがネック方向に対して上を向くような状態でのピッキング方法です。
それではここからはそれぞれのピッキングアングルの出音の傾向と簡単な持ち方を解説していこうと思います。
フラットピッキング
まずはフラットピッキング。
ピックが直接“面”で弦にあたり、滑りも少なくピッキングした指に伝わる感触や弦の反応も“素直”に感じます。ディストーションをかけて弾いた場合はピッキングノイズが他の角度のついたピッキングに比べて少ないように思います。その低ノイズとはっきりとした発音の特性からか、筆者が今まで読んできたギター関連の参考書などでも最もオススメされているピッキング方法です。
持ち方としては親指と人差し指でピックを持つ場合親指は腹でもつとして、人差し指も指の腹で挟むようにすると感覚がつかみやすいと思います。
順アングルピッキング
次は順アングルピッキングについて。
これは筆者オススメのピッキング方法です!なぜオススメなのかは最後のまとめのところに書きますね。
ギタリストの中で最も多いのがこの順アングルピッキングだと思います。
音楽関連雑誌の写真や演奏動画等みていてもとても多いパターンであり、アーティストがインタビューなどでフラットピッキングを推奨している場合でもライブ写真などを見ると、ギターを肩にかけている角度と手の角度からいって、恐らくピッキング角度が順アングルになっているのを見かけます。
出音の特徴として、他のアングルと一番違うのはパチッというようなアタックが感じられるところです。ゆっくりピッキングしてみると弦の上をピックが滑る感触もあります。ディストーションで弾くとピックのアタック音がより強調されて気持ちいいですねぇ!これぞロックギターという感じです。
オススメの持ち方は親指は腹で持ち、人差し指は先端から第一関節までの部分の側面で挟むといいと思います。この持ち方で自然にギターを構えると自然と少しネック側に倒れたピッキング角度になると思います。
逆アングルピッキング
最後は逆アングルピッキング。
外国人ギタリストに多く見られるこのピッキング方法、ジョージ・ベンソン等特にR&B系ジャンルのギタリストに多い気がします。演奏動画等からの筆者の調べでは、ハーマン・リーやトーシン・アバシ等へヴィメタル系ギタリストもこの使い手のようです。
実際にこのアングルで弾いてみた感じとしては、どこかほんの少し低音が出やすい気がします。フラットピッキングに比べて少し丸く、太い音のように感じます。順アングルピッキングで感じた滑る感触はなく、ピッキングノイズも順アングル程は無いように思います。
個人的な印象ですがディストーションをかけた時は立体感のある太い音のように感じます。
持ち方はフラットピッキング同様親指、人差し指両方の腹でピックをつまみ、親指の第一関節が凹むように上に反らすと感覚を掴めると思います。
結局どのピッキングアングルがベストなのか?
まずは三つのピッキングアングルとそれぞれの簡単な持ち方をご案内しましたが、結局どれがベストなのか?
これについては僕が常々生徒に伝えていることは「自分が一番好きな、一番しっくりくる方法」がベスト、だということです。
ギターを勉強していく上ではこのピッキングフォームや角度、ピックの持ち方等どこかのタイミングで皆悩むものです。その度に矯正したり、ああでもないこうでもないと新しい方法を試し、イライラし…(笑)。逆アングルピッキングの出音が好きだからそれで練習する、それでいいじゃないですか。逆アングルピッキングの音が好きだけど、フォームがしっくりこないからフラットピッキングで練習する、それでいいんです。
確かに、ギターを弾く上ではファームがしっくりこないことで無駄な力みが生じてかえって成長を妨げることもあると思います。座って弾いた時とストラップをかけてギターを弾いたときでさえギターの角度は変わりますし、ライブで演奏に夢中になっているときはピックが弦にあたる角度なんて気にしてられません。
音楽なのだから音を最優先にしなければいけないという考えもあると思いますが、でもまず第一に自身が気持ちよく弾けていないと実際の演奏に集中できなかったり、聴衆に感動を与えるような演奏をするのは難しいのではないかと思います。イライラしながら、怒りながらギターを弾いているライブってあまり見たい気がしません…。
逆アングルピッキングは出音が太いと書きましたがそれが絶対ということではありませし、音を優先するのか、フォームを優先するのか、他のファクターでもいいのですが要するにギタリスト一人一人が独自のシグネチャートーンを見つけ出していければいいのではないかと思います!
因みに筆者がなぜ順アングルピッキングをオススメするのかを最後に書いておきます。
今の時代、音楽の録音方法は日に日に進化しており、きっと近い将来リアルなギターサウンドもコンピューター上で作れるようになる日が来ると思います。今でさえドラムやベースが置き換わっているのですから当然ですよね。
生身の人間がギターを録音することの利点はまさにその音が“生身のギター”に聴こえるからだと思います。ギターをギターたらしめているのはピッキングノイズだと筆者は考えており、今の時代そのピッキングノイズも“音楽”の一部になりえると思っています。
ディストーションをかけて順アングルで弦を思いっきり弾いた時のあのジャリっとした音こそが人間の耳には“情熱”として伝わり、また“忘れられない一音”として人々の心を打つのではないかと思います。
まとめ
出音の感じ方は人によって違いますし、弾いた時の環境、さらにはピックが削れていれば尚更感じ方は変わると思いますのであくまで目安としておいて頂ければと思います。
たかがピッキング、されどピッキング…今回は少しマニアックな内容になりました。
1. フラットピッキング→最も“素直”
2. 順アングルピッキング→ノイズもあり、“ロック”らしい音
3. 逆アングルピッキング→ノイズ少な目で丸い、太い音
以上の3点について知っておくとご自身のギタースタイルを構築するヒントになるかもしれません。
ABCミュージックスクールギター科講師の星野尚紀がお送りしました。
また次回お会いしましょう!