アコースティックギターVSエレキギター
こんにちは!ABCミュージックスクールギター科講師の星野尚紀です。今回は題名の通り、ギターを始めるときに知っておいて損はしないアコギとエレキ、それぞれの違いについてお話をしたいと思います!!
日頃から東へ西へ、移動距離は東海道新幹線並み(笑)にあちこちでギターレッスンを請け負っていますが、体験レッスン生から度々このような質問を受けます。「これからギターを始めるにあたってアコギとエレキ、どちらから始めたらいいですか?」。そんな悩める未来のギターヒーロー達に、まずはそれぞれの違い、そして意外と大事な「練習環境に合ったギター選び」にも触れながら解説していきたいと思います。
それでは詳しく見ていきましょう!
ルックス ~ロックなら見た目から入れ!~
「ロックギタリストはまず見た目から入れ!」なんて言う言葉をよく見かけますが、ギター選びに関してもこれに通ずる部分があります。
一般的なアコースティックギターとエレキギターをシンプルに見比べてみたいと思います。
アコギ
大抵のアコギはボディが大きめで真ん中あたりに丸い穴があり、鳴らした弦の音が反響するようにボディ内部は空洞になっています。そのため当然のことながらボディは割と厚めにできています。これは物理的にしょうがないことでしょう。アコギを弾き始めた時って案外このボディの大きさに戸惑うことがあります。最近ではボディが小さめのアコギも増えているのは体格の小さい人には朗報!
エレキ
エレキギターは弦の振動を拾うピックアップと弦さえ張ってあればボディの形はなんでもいいのです。そのため無駄に厚いボディにする必要もないし、体格の決して大きくない人にも豊富な選択肢があります。ボディの色やグラフィック等もアコギに比べてなぜか圧倒的に種類が豊富です。
それぞれの体格に合わせてストレスの少ないギター選びをするのも将来的なモチベーションを保つのには大切かもしれませんね!
エレキギターは本当にたくさんの形/デザインがあるため、その“インパクト”で勝負できるというメリットがあります。しかしアコギはアコギであの“落ち着いた渋さ”が何よりの武器!
いやぁ…迷っちゃうなぁ…。
生音の音量 ~雷オヤジの逆鱗に触れないように…。~
アコギ
市場に出回っているほとんどのアコギは弦の真下に丸い穴が開いていて、そこを通じてボディの空洞で音が反響し、音が出ます。コードを弾いたり、メロディを弾いたり、お友達と合奏したり、普通に弾いているだけでそこそこの音量が出るので気軽に楽しめます。しかしこれが油断大敵!例えばこれがマンションや壁の薄いアパート、騒音に敏感なご近所さんがいる場合は話が違ってきます。アコギは「気軽に、ある程度の音量」で楽しめる楽器ですが、どんなに弱く弾いても「最小音量」が“0”にならない、といった特徴があります。サウンドホール(弦真下の丸い穴)にかぶせる消音機もありますが、それを付けても“0”になるというわけではありません。ご自宅で練習する時にこの「単体で弾いても音が出てしまう」問題はギター購入の時に少し頭の片隅に入れておいた方が、雷オヤジの逆鱗に触れずに済むかもしれません(笑)。
エレキ
「ギャンギャン!!!」、「キュイーーーン」、「ギュウーーーン!!!」
そんなイメージのエレキギターですが実はこれ、ギターとアンプを繋ぐケーブルを抜いた瞬間、手元で弦を弾く「ペラペラ」とした音しか鳴りません。ライブに行って突然ギターの音が途切れたりするじゃないですか?まさにあの現象です。声を失ったカオナシがカエルを飲み込んで声を借りるように(笑)、エレキギターもアンプに通して弾いてこそエレキギターなのです。従ってアンプを通さずに自宅で練習していれば、よほど耳の良い雷オヤジが隣人でない限り、騒音問題を気にせずギターを練習できます。先ほどのアコギのお話しの「最小音量」を圧倒的に小さくできるということです。本当に“0”になるわけではありませんがアコギと比べれば生音は格段に小さいのがエレキギターの特徴です。また、アンプに通してもアンプの音量を極小に設定さえすれば、エレキギターの楽しさを味わいながら練習可能です。
それぞれの生音(最小音量)を感覚的な数値でたとえるなら(Max 10)
アコギ3~5 エレキ0.5~2
かなぁと個人的に思います。
自宅に持ち帰って練習する時のことを考える、これもギター選びの要素の一つかもしれません。
弦のゲージ(太さ) ~No pain No gain?~
次はアコギとエレキ、それぞれの一般的な弦のゲージについてです。
これって関係無いようで案外重要だと思います。
弦は交換してしまえばいくらでも太く/細くできますのであくまで“一般的”な話にとどめておくことにします。
アコギ
一般に流通しているアコギに最初から張ってある弦は恐らく.012~.054くらいのゲージだと思います。少し細いゲージですと.011~.052くらい。実はエレキギターの一般的なゲージより一周り太いんです。このほんの数ミリの違いでギターを弾くときの感触ってすごく変わります。
焼き鳥のタレなのか塩なのかくらい差があるんです!
弦が太いと、弦を押さえる左手の力もそれなりに必要で、難易度も上がります。弦を押さえつける力が足りなくて音が詰まる、いい音が出ない、雑音ばかり鳴る…。ギター始めた時なんて練習後に毎回弦の痕が左手の指に残ります。翌日はそのせいで指先がじんじん痛くなります。それがモチベーションを削ぎ、せっかくギターヒーローを目指したのに段々とギターを触らなくなってしまっては勿体無い話です…。
エレキ
エレキギターの一般的なゲージは.010~.046もしくは.009~.042と言って問題ないでしょう。かの“王者”イングウェイ・マルムスティーンのシグネチャーセットは.008~.046です。やはりアコギより一周りも二周りも細いのです。これによる恩恵も決して小さくなく、ギターを始めた時に感じる、左手で弦を抑える負担がだいぶ減ります。結果、音が詰まったりせず、意図した通りの音が出やすい、と言えます。ギターを弾くこと自体「左手で金属の弦を抑える」、なんていう非日常の行為を行うわけですから負担は少ないほうがいいに決まっています。
「弦の太さ」に焦点を当てたこちらでもエレキギターの方に軍配が挙がった様子ですね。
気を取り直して次に行きましょう!
エフェクタとの相性 ~どこまで寄り添える?~
次はエフェクタとの相性についてです。
エフェクタを使うにはどうしたってケーブルでギターとエフェクタを繋ぐ必要があるのでアコギについてはピックアップを付けたものを前提でお話しを進めます。またエフェクトそれぞれの詳しい説明についてはここでは省きます。
アコギ
アコギもピックアップを付ければエフェクタを繋いで音を加工することができます。神秘的なコーラスや残響を加えるリバーブやディレイ、特殊効果を加えるフランジャーやフェイザーといったものがありますね。最近ではZoom社のMS-50というエフェクタに内蔵されている「Bomber」というピッキングすると爆発音が鳴るエフェクタもあります。僕自身面白半分で試してみましたが、爆発音のピッチは弾く音程に関わらず一定でした(笑)。今後どんな曲で使うか、吟味しているところです…。
えー、話を戻します。
アコギが唯一苦手な(絶対無理というわけではない)のが恐らくディストーションです。ハードロックやへヴィメタル等でよく聴くあのザクザクした音に加工するディストーションというエフェクト、アコギにおいてはあれだけは使い方に注意を払わなくてはなりません。あまり強烈なディストーションをかけるとどうなるか?皆さん小学校時代を思い出してください…。先生が永遠メガホンをもって話をしては「ピーッ!」、また話し始めては「ピーッ!」…。増幅された音がアコギのボディ内で反響して飽和状態になってしまい、ハウリングが起きてしまうのです。ディストーションを使う時だけはその設定する効果の深さに気を留めておきたいところです。
エレキ
エレキギターとエフェクタの関係についてはお察しの通り、“冷めることのない、永遠の愛”ってやつですね!(?)エレキギターのためにエフェクタが開発され、そのエフェクタに命を吹き込むのもまたエレキギターである、といっても過言ではないでしょう。上述のコーラス効果や残響音系、特殊効果系などどれをとっても相性は抜群です。
さて、先ほどの項では「アコギはエレキギターのようなギンギンな音を出すのは苦手」、でしたが果たして逆はどうなのか?エレキギターでアコギの音は出せるのか?
これについては現代のテクノロジーの発展によって“不可能ではない”域に達してきていると僕は思います。まず“アコースティック・シミュレータ”というエレキギターで“アコギのような音”を出すエフェクタが存在します。それに加えてエコライザやコンプレッサーなどでよりアコギの音に近づけることができます。ただし、当然のようにエレキギターの本体を肉抜きして空洞を作らない限りアコギ特有のギターの“生鳴り”は得られません。アンプから出てくる音をアコギのような音にすることができる、という捉え方の方がいいのかもしれません。
以上がアコギとエレキそれぞれのエフェクタとの相性を個人的な観点から書いてみました。
エレキの方が音作りに関しては“万能”のように聞こえますが、アコースティックギターはそれはそれで“何にも代えがたい凛とした鳴り”を持っていると思います。
まとめ
以上、アコースティックギターとエレキギターの一般的な違いについていくつか挙げてみました。これからギターを始めようという方、アコギとエレキどちらから始めればいいかお悩みの方、アコースティクギターとエレキギターの違いを知りたかった方等「なるほど!」と頷いて頂ける点が一つでもあれば幸いです。今回のまとめとしては…
1.アコギは形/大きさの種類がある程度決まっている。わりと厚め。エレキは何でもあり!わりと薄め。
2.生音での音量の違い。普段の練習環境に合うものを!生音数値:アコギ3~5 エレキ0.5~2
3.弦のゲージによって弾きやすさは変わる!
4.アコギでロックは苦手。エレキでアコギに似た音は出せる。
といったこととなります。結局アコギとエレキ、どっちから始めればいいのか?ここまで書いておいて元も子もない話ですが、「好き」や「ビビッ!と来た」、「大好きなミュージシャンが使っているから」等そういった本能的な“衝動”を大事に、選んでいったらいいと思います。そういったことって小さいモチベーションにつながると日頃から生徒さんを見ていて思います。練習に疲れて嫌になったけどなんとなくやっぱり手に取ってしまう、素敵じゃないですか…。ウィスキー飲みながらふと部屋の片隅に立てかけてある渋いギターを見つめるのもいい時間です。それぞれが“最愛”のギターに出会えますように!
それでは次回のブログでお会いしましょう。ABCミュージックスクールギター科講師の星野尚紀がお送りしました。