速度記号ってなに?①「遅く」 特徴を覚えてピアノの練習に備えよう!10

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速度記号ってなに?①「遅く」 特徴を覚えてピアノの練習に備えよう!第10弾

梶田講師
こんにちは!ABCミュージックスクールピアノ教室科講師の梶田です。
前回「だんだん~」の強弱記号についてお話ししましたが、今回は「だんだん~」するをメインに、曲中で速度を「遅く」させる記号についてお話ししたいと思います。
(前回がどんなお話しだったか思い出したい方はコチラから!)

今回は曲中で速度を変化させる速度記号がテーマです。どの様に弾くと効果的かも含めてお話ししますので、楽譜の理解をさらに深めてみましょう!

 

遅くする


こちらの楽譜に書かれている「rit.」は代表的な「遅くする」記号の一つです。楽譜上最後の方に出てくることが多いかな、と思います。
速度を変化させる記号はたくさんありますが、先ずは「遅くする」記号から見ていきましょう!

 

「リタルダンド」と読みます。多くの場合、「rit.」と省略して書かれているかと思います。今回お話しする記号の中で楽譜上で目にする機会が特に多い記号ではないでしょうか。

「ritardando」は、
強調を表す「ri-」
遅れる、遅くなる、という意味の「ritardare」
前回もお話ししました現在進行形を表す「-endo」
で、「だんだん遅く(ゆっくり)」になります。

「ritardando」はフレーズの終わりや、曲の最後に書かれていることが多く、前回の「だんだん弱く」を表す「decrescendo」や「diminuendo」とセットで書かれることも多いです。

 

こちらも「だんだん遅く」を表す記号です。
「ラレンタンド」と読みます。こちらも省略形で「rall.」と書かれていることが多いように思います。

「rallentando」は、
強調を表す「ra-」
ゆるやかにする、ゆるめる、という意味の「lentare」
現在進行形を表す「-ando」
で、「だんだん遅く(ゆったり)」となります。
こちらも「ritardando」同様、フレーズの終わりや、曲の最後に書かれていることが多いです。

さらにスペルをよく見ていただくと、途中に「lent(o)」が見えてくると思います。こちら、「レント」と読みますが、よく音楽用語で聞きませんか?楽譜のはじめに書かれていることが多い記号です。
この「lento」にも「遅く、ゆったりした、のろい」といった意味があり、ゆったりとした曲に書かれていることがあります。ですので「rallentando」を「lentoにしていく」という意味で捉えてもいいと思います。

また、「ritardando」と「rallentando」は両方とも「だんだん遅くする」という意味になりますが、この2つは少々意味合いが異なります。

「ritardando」は《時間》がゆっくりしていく
「rallentando」は《速度》がゆったりしていく
ということなのだそうです。

「ritardando」→「遅刻する」
「rallentando」→「スピードを落として」
といった感じで覚えておくといいのでしょうか。

この2つの捉え方を変えて使っている作曲家もいますが、「ritardando」よりも「rallentando」の方が長い小節にわたってゆっくりしていく時に書かれているように思います。しかし楽譜上書いてある場合はどちらも「だんだん遅くする」ことに違いありません!

 

「リテヌート」と読みます。
こちらは「だんだん」はつきませんが、「遅くする」といった意味になります。

「ritenuto」は、
強調を表す「ri-」
引きとめる、抑える、という意味の「tenere」
で「遅くする」という意味になりますが、音楽用語辞典には「急激に遅くする」とかかれているものもあるように思います。

「だんだん」はつきませんので、記号の書かれている箇所にきたら「遅くする」のですが、元の単語の「tenere」に「引きとめる」や「(感情を) 抑える」といった意味合いがありますので、前後関係なく急激に遅くはしない方がいいように思います。前後がどのようになっているのかを考えて「慎重に」遅くしてみましょう!

 

もとのテンポで


「ア・テンポ」と読みますが、「もとのテンポで」という意味の記号です。
曲中で出てくる場合、前記しました「遅く」、そして次回解説予定の「速く」といった速度記号とセットで使われることが多いです。速度を変化させる記号とは切っても切れない記号ですので、セットで覚えておくと便利ですよ!

 

だんだん遅く&強弱

速度と強弱が一緒になった記号もあります。
こちらは出てくる頻度がそんなに多くはありませんが、こんな記号もあるんだ~、と知っておくのもいいと思いますよ!

 

だんだん遅く&弱く

先ずは「だんだん遅く&弱く」です。4つ紹介しますが、それぞれ少~し意味合いが違いますので、お話ししていきたいと思います。

 

こちらは「カランド」と読みます。

「calando」は、
おろす、下げる、という意味の「calare」
現在進行形を表す「-ando」
で、「だんだん速度と音量を下げて」といった意味になるかと思います。
ただ、「calare」にはゆっくりと「おろす、下げる」という意味があるようですので、「ゆるやかに遅くしながら弱くしていく」といいのではないでしょうか。

 

こちらは「モレンド」と読みます。

「morendo」は、
死ぬ、絶える、消える、という意味の「morire」
現在進行形を表す「-endo」
で、「だんだん消えるように、絶えるように」といった意味になるかと思います。
死に絶えるように、光などが徐々に消えていくように、「だんだんゆっくり、弱くしながら」弾くといいのではないでしょうか。

 

2つ目は「スモルツァンド (ズモルツァンド)」と読みます。

「smorzando」は、
和らげる、鈍くする、減衰させる、という意味の「smorzare」
現在進行形を表す「-ando」
で、「だんだん速度と音を和らげて」→「だんだん静かに」といった意味になるかと思います。
音と速度を「和らげる」ので、「morendo」の方が同じ「遅く&弱く」でも意味は強いかもしれませんね。

 

「ペルデンドシ (ペルデンドーシ)」と読みます。

「perdendoshi」は、
なくす、失う、という意味の「perdere」
現在進行形を表す「-endo」
自分(たち)を、という意味の「si」
で、「~自身をだんだん失っていく」という意味になるかと思います。
音量や強さ、それまでの雰囲気や気持ちも「失っていく」感じが表せるといいのではないかと思います。

 

だんだん遅く&強く


「アラルガンド (アッラルガンド)」と読みます。

「allargando」は、
広げる、拡張する、という意味の「allargere」
現在進行形を表す「-ando」
で「だんだんゆったりと」といった意味になると思います。
「allargere」には道や間隔を「広げる」といった意味がありますので、テンポも強弱も幅を広げるように「だんだん遅く強く」弾くといいと思います。

 

楽譜で見てみよう!

楽譜上でどのように書かれているかみてみましょう!
今回ご紹介した記号の中で一番よく出てくる「ritardando」と「rallentando」、「ritenuto」、「a tempo」についてどの様に弾くといいか見ていきましょう!

 
先ずは「rallentando」です。

【エステン:人形の夢と目覚め】

「dim. e rall.」と書かれているところを見ていきましょう。
先ず「dim. (diminuendo)」は前回やりました「だんだん弱く」ですね。「e」は「そして」です。そして、「だんだんゆっくり」を表す「rall.」がありますので、「だんだん弱く、そしてゆっくり」していきましょう。

音源を2つ用意しましたので、聞いてみてください。
音源① 音源②

前回「だんだん強く/弱く」でも解説しましたが、「だんだん」するのは後半!です!!
音源①ですと早めに速度を遅くしてしまっていますので、後半がもたついて聞こえるように思います。音源②の方が丁度良くゆっくりしているのではないでしょうか。


「だんだん」がつく場合は、どの記号でも大体後半で「だんだん~」すると無難かと思います。速度&強弱の場合も全て「だんだん」がついていますので、後半で速度も強弱も変化させるといいと思いますよ!

 
次は「ritardando」「a tempo」です。

【ベートーヴェン:エリーゼのために】

「dim. poco rit.」と書かれているところを見ていきましょう。
「dim.」は「だんだん弱く」ですね。
「rit. (ritardando)」をするところが短いのですが、「poco (少し)」もついていますので、「少しゆっくり」していきます。
そして、「a tempo」とかかれているところにきたら≪確実に≫ゆっくりする前の「もとのテンポ」に戻してください!「ritardando」を引きずらないことがポイントです!!

 
最後に「だんだん」のつかない「ritenuto」です。

【ブルグミュラー:すなおな心】

「dim e poco riten.」書かれているところを見ていきましょう。

「ritenuto」は「遅くする」という意味ですが、「ritardando」と「rallentando」とは違い、「だんだん」がつきません。ですので、「だんだん」なしで書かれているところから「ゆっくり」します。
「ritardando」・「rallentando」と「ritenuto」の違いは見落としがちですので、是非ご自身の楽譜でも確認してみてくださいね。

こちらも音源を2つ用意しましたので、聞いてみてください。
音源① 音源②

②の方は少々ゆっくり過ぎるように思いませんか?①の方が音楽の流れに合っているように思います。

「ritenuto」だからといってただ「遅く」すればいいわけではありません!前後の音楽をよく確認して曲に合っている速度を選びましょう!!
それに、メトロノームの数値をいくつに落として…なんて確実な正解はありませんので、是非色々試してみてください!きっと「これだ!」という速度が現れると思いますよ。

 

まとめ

梶田講師
速度が「遅く」変化する記号、いかがでしたか?

前回の記事でもお話ししましたが、「だんだん~」する場合はやはり効果的なのは「後半」で「だんだん~」することです!早めにはじめてしまうと効果が薄くなってしまいます!!ゴールに向かって後半でしっかり「遅く・強く・弱く」していきましょう。

そして、「だんだん」がついていない場合は加減が肝心です!塩や砂糖といった調味料と同じく、いい塩梅になるように加減してみましょう!!前後の音楽がどの様になっているのかを見極めて速度を決めてみてくださいね!

次回は「遅く」とは逆の「速く」変化する記号編です。
確実な正解のない記号ですが、色々試してみてご自身なりの正解を探してみてくださいね!