ベーシスト列伝~チャック・レイニー(CHUCK RAINEY)編~

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現役プロベーシストがチャック・レイニーを語る!

佐々木恵太郎
こんにちは。ABC Music Schoolベース科講師の佐々木恵太郎です。
今回はアメリカで最も多くの仕事をしてきたと言われるベーシスト、チャック・レイニーについて紹介させていただきたいと思います。

チャック・レイニー略歴

1940生まれ、両親ともに音楽好きで、幼少期からピアノやビオラ、トランペット、ギターなどを経て、21の時にエレキベースを始める。

地元で名の知れてきたチャックをビッグジェイマクニーリー(ジャンプブルース系のサックス奏者)に拾われ、彼のバンドで半年間活動後、1962年にNYへと進出。

60年代後半~70年代
60年代半ばにはキングカーティスバンドに在籍。(キングカーティスはサックスプレーヤーで、当時NYソウルシーンの重鎮)他アーティストのレコーディングの仕事が急増。

そこから70年代後半まで、ルイ・アームストロング/ロバータ・フラッグ/アレサ・フランクリン/クインシージョーンズ/ダニーハサウェイ/リトル・リチャード/デラニー&ボニー/ベット・ミドラー/ジョー・コッカー/ジェームス・ブラウン/スティーリー・ダン/セルジオ・メンデス/マーヴィン・ゲイ/ジャクソン・ブラウン/リー・リトナー/ミニー・リパートン/リンゴ・スターetc…
この10年足らずの間だけでもおびただしい数のアーティストのレコーディングに参加。

80年代
レコーディングワークからは少し距離を置くようになり、教則映像、本、雑誌へのコラム掲載、クリニックなど、後任への教育活動にも熱心になり、その間でたまにNYなどでレコーディングに参加するといった活動を現在まで続けています。

日本でも渡辺貞夫、高中正義、ピンクレディー、鈴木茂、SMAP、吉田美和などのアーティストの作品に参加していて、チャックレイニーの日本版公式サイトがある程、日本人にとっても認知度の高いベーシストです。

チャック・レイニーの代表曲紹介

Marlena shaw / Street Walking Woman


まずは何と言っても老舗Jazzレーベル「Blue Note」から1975年にリリースされたマリーナ・ショウのアルバム「Who Is This Bitch, Anyway?」からこの曲!なぜかR&B/Soul系の作品の中では一般リスナーの中であまり話題にあげられないシンガーですが、このアルバム、そしてこの曲はチャックのベースがとても生き生きしていて、チャック・レイニーを語る上で外せない曲です。

特筆すべきところはAメロの16分音符!
後で説明しますが、これだけの細かい音符をチャックはなんと人差し指一本で弾いています。
チャックの軽快なベースのサウンドがクールな大人の女性を素晴らしく表現しています。

Steely Dan / Peg


泣く子も黙るスティーリー・ダンの1977年リリースのアルバム「Aja」からこちらの一曲。
この曲もチャックがプレイしている中でとても有名な一曲。

イントロ(動画0:05~0:08あたり)のE7の3度への上る綺麗な音使いは、自分もそうですが、かなりの数のベーシストの手グセとなっているのではないでしょうか?

余談ですが、サビでチャックはスラップ奏法をしているのですが、スティーリー・ダンのメンバーはスラップ奏法に対してあまりポジティブではなかったため、どうしてもスラップをやりたかったチャックはレコーディングの際メンバーに背中を向けて、こっそりスラップでレコーディングしたそうです(笑)

その為かはわかりませんがあまり派手でなくクールなサウンドで、とてもスティーリー・ダンの世界観とマッチしていますね。

チャック・レイニーのベースサウンドの特徴·プレイスタイル

使用機材

1980年頃まではフェンダープレシジョンベース1957を使用。(アンソニージャクソンの影響で後にブリッジ寄りにジャズベースのピックアップが増設される)

とアンペグのベースアンプB-15をメインに使用し、80年以降はスペクター、ケンスミスの6弦、YAMAHA、フォデラ、現在はXotic guitarsのチャックレイニーモデルや、XJ-1Tなどをメインに使用しています。

80年代以降多弦ベースを使うようになったのはSteely Danのアルバム「ガウチョ」に参加した際、同じくレコーディングに参加したベーシスト、アンソニー・ジャクソンから影響を受けてとの事。

チャック・レイニーの顔となるサウンドはやはり一番活躍された70年代のプレべ×B-15のコンビですが、時代の流れとともに使用する機材も改造や持ち替えなどでその時代のサウンドに対応していて、それまでの既成観念に囚われない寛容な考え方がスタジオミュージシャンとしてのベーシストの理想の一つだと思います。

ベース奏法

基本チャックはフロント側で弦を弾く傾向で、そのためあたたかいトーンで、さらにスウィング感のあるピッキングによりゴムが弾むような軽快なサウンドがチャックレイニーの持ち味でしょう。

音符にしてみると音数こそ多かったりもしますが。難しい音使いは少なく、割とリズムで攻めている傾向がある様に思えます。その中でも特徴的な奏法を二つご紹介したいと思います。

1フィンガー奏法

曲紹介の際も触れましたが、チャックの特徴の奏法の一つとしてはやはり1フィンガー奏法です。
これは人差し指を上下に動かしてオルタネイトピッキングをするのですが、これがやってみるととてつもなく難しいのです、、、
まぁ2フィンガーを使用すれば難なくできるフレーズが多いのですがどうせならチャックに習って1フィンガーでマスターしてみたいですね!
参考動画(0:45~から1フィンガー奏法)

ダブルストップ奏法

3rd,7th,6th,などのコードトーンをハイポジションの方で鳴らす「ダブルストップ」を積極的にベースラインに取り入れたのもチャックレイニーが初めて初めてではないでしょうか。

さらに開放弦を交えることでRoot,マイナー、メジャーのコードのキャラクター、7th,9thなどのテンションコードの独特の響きが得られ、ベース単体で一度にそのコードの響きを広く表現する事ができます。

Marlena Shaw / Feel Like Makin’ Love


この曲のサビ前のダブルストップはとてもセクシーにキマっていますね!

まとめ

1970年代と言うR&B/Soul黄金時代の中で活躍したチャック・レイニーですが、彼の語りかけるような愛のある優しいベースサウンドが当時のシーンに本当にマッチしていたからこそたくさんのオファーが来たのかもしれませんね。時代の流行りに乗ったプレイや機材を重視することがスタジオミュージシャンとして大切な事の一つだと教えてもらえるような気がします。

最後に、完全に自慢話になってしまいますが、以前アメリカの楽器の祭典、NAMM SHOWにお邪魔した際Xotic Guitarsのブースに偶然チャックレイニーがいらっしゃって、その時偶然持っていたプレベのピックガード(笑)にサインして頂きました。

急に話しかけたのにもかかわらず丁寧に対応してくださり、日本でのライブの事や、好きな食べ物の話などもお話ししてくださいました。やはり世界でもトップレベルのセッションワークをこなすベーシストは人間としてのレベルもトップなんだなと思った自分でありました。。。

以上、ベース科の佐々木がお送りしました!また次回!!


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ABOUTこの記事をかいた人

幼少の頃より親の影響でギター、マンドリン、バイオリン、エレクトーンなどの楽器を経験し、13歳でエレキベースを始める。 2010年、ESPミュージカルアカデミーに入学。卒業後は様々なバンド、アーティストのサポートなどの活動を行う。 2013年、資生堂とベーシストkenkenのタイアップコンテストであるUNO×KenKenグルーヴコンテストにて最優秀賞を受賞。 同年に行われたMI JAPAN主催の第一回BIT MASTERSでは初代総合グランプリを獲得。 現在、サポートベーシストとしてシンガー、バンド、アイドル、劇団などのレコーディング、ライブなど多方面で活動中。